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* Gelosia *
ボンゴレ9代目と子供時代のザンザスとディーノのお話

「あれ? あそこにいるのは…」
公園に向かう途中見知った人影を見つけたディーノは、ニッと笑うと方向転換してその人に駆け寄った。
「ボンゴレのじいさん! 久し振り!!」
「ん? ディーノじゃないか。久し振りだな」
『ボンゴレのじいさん』と呼ばれた初老の男性、ボンゴレ9代目は声のする方に振り向くと、元気そうなディーノを見て嬉しそうに目を細める。
「外でじいさんと会うなんて初めてだなー。これからどっか行くのか?」
「ああ、たまには息子と二人でのんびり買い物や食事でもしようかと思ってな…そうだ。ディーノにはまだ紹介していなかったね。私の息子のザンザスだ」
先程から歩を止められ不快な表情を隠そうともせず露にしているザンザスに気付いた9代目は『スマンな』と小さな声で言った後、ザンザスの存在に気付いてキョトンとしているディーノに息子を紹介した。
「じいさん子供いたのかよ。知らなかったぜ。あ、オレディーノってんだ。じいさんとはちっちゃい頃からよく遊んでもらってるんだー。よろしくな」
何度もボンゴレの屋敷には遊びに行っているのに、今までザンザスの話題すら耳にしなかった事に子供ながら違和感を感じつつも、ディーノはニコッと笑ってザンザスに握手を求めるように手を出した。
しかしザンザスはディーノの手を一瞥しただけでそっぽを向いてしまう。
「ディーノもこれからどこかにお出かけなのかい?」
ザンザスの反応にどうしていいか分からず、差し出した手のやり場に困っているディーノと、そっぽを向いてしまったザンザスに困ったような笑みを浮かべ、9代目は話題を変えようとディーノに声をかける。
「オレはこれから公園で友達と遊ぶ約束してるんだー」
「そうか…楽しんでおいで。時間は大丈夫なのかい?」
「うん。少し早めに家出たから…」
「それならジェラートでも食べるかね? ご馳走するよ」
「マジでか? じいさん大好き!」
9代目が近くにあったジェラートの出店を指差すと、ディーノはぱぁっと顔を輝かせる。
「ザンザスも食べるかい?」
「いらねぇよ」
「…もう少しだけ待っててくれな」
苛ついているザンザスを宥めてから、ディーノとすぐ側にある出店に向かった。
「おっちゃん。ジェラートちょうだい」
「ん? よく買いに来てくれる坊やじゃないか。今日は何にする?」
「んーと…チョコラータがいい。パンナも付けてね」
「チョコラータのパンナ付きね…はいよ。いつも買ってくれるから今日はオマケで大盛りにしたよ」
「やったー! おっちゃんあんがと!! また買いに来るなー」
ディーノはジェラートを受け取ると、9代目がお金を払っている間に一人でポツンと立っているザンザスのところに戻った。
「あそこのジェラート、すげー美味いんだぜ。ザンザスも買ってもらえばよかったのに」
「…よくそんな甘ったるいモン食えるな」
チョコラータにパンナという甘々な組み合わせと、それを手にしてニコニコ笑っているディーノを呆れたような目でチラ、と見る。
「ん? お前甘いモン苦手なのか? 一人で一個食べきんないからいらねぇっつったの? そんならオレの一口食う?」
ザンザスに呆れた目で見られているのに気付かず、ディーノは目の前にジェラートを差し出した。
「いらねぇっつってんだろ!!」
「うわっ!?」
ディーノの態度に苛々が最高潮に達したザンザスは、ワザとディーノの顔にぶつけるようにジェラートを押し返す。
「ザンザス、何してるんだ! ディーノに謝りなさい」
一連のやり取りを見ていた9代目は慌てて二人に駆け寄りザンザスを諫める。
「フン…いつまでそんなヤツに構ってるんだ? オヤジ、オレは先に行く」
謝るどころか、顔中ジェラートとパンナまみれになっているディーノを睨みつけると、ザンザスは9代目を残したまま立ち去ってしまった。
「何だよアイツ! 一人で苛々しちゃってさ」
「…すまないね、ディーノ。あの子はいつもあんな調子でね」
「そーなのか? 何かじいさんと正反対な性格だな」
「忙しくてあの子にはなかなか構ってやれなくて申し訳ないとは思っているんだが…頼める立場ではないんだが、もしよければ会えた時はザンザスにもまた声をかけてやってもらえないか?」
「それは…構わねぇけど…」
「ありがとう…ディーノは本当に優しくていい子だな」
9代目はディーノの頭をそっと撫でながら、まだ鼻の頭についたままになっているジェラートをペロッと舐め取った。
「わ…何だよじいさん! くすぐったいって! 止めろよー」
口では止めろと言いつつも、触れ合いが何だが嬉しくて自然と笑みが零れる。
9代目はハンカチを取り出すと、天使のような笑みを浮かべるディーノの顔を拭ってあげた。

「……」
立ち去った後、一度立ち止まり振り向いたザンザスは二人のやり取りを見て顔を顰めると、チッと舌打ちする。

オヤジが誰にでも甘い顔するから、ディーノとかいうアイツが男のクセに甘いモン目の前にして喜んでるから、こんなにも苛々するんだ。

自分にそう言い聞かせるように心の中で呟きながら、今度は振り返る事なく歩を進めた。