「んっ……あ゛ぁ〜」 報告書の最後の行に「以上」と記入して羽根ペンをインク瓶に戻すと、やっと苦痛の時間から解放されたと思い切り伸びをする。 いつもならここでタイミングよく淹れ立ての紅茶が差し出されるのだが、オルゲルトは今遣いに出してしまったため不在で、仕方なく机の端に放置していたティーカップに手を伸ばした。 「……チッ」 何で正統王子のオレ様が報告書書きなんて雑用しなきゃなんねーんだ。 すっかり冷めきって香りの飛んでしまった紅茶の不味さも相俟ってイライラが募る。 しかし、以前オルゲルトに丸投げして書類を提出させた時に釘を刺されてしまったので致し方ない。 『今回は受け取るけど、次からちゃんとジル君が書いてね。僕は君に報告を頼んだんだからさ』 なんて言われたら、やるしかねーだろ。白蘭様のおっしゃることは絶対だからな。 そう自分を窘め、苛立ちを体内から追い出すように深い息を一つついた。 「あ゛ー……にしても疲れた……」 続けて不満を漏らしながら椅子の背凭れに体を預けるが、執務室の少し硬いそれでは全然癒されない。 もっと柔らかでモフモフしたものに埋もれて、何も考えずただただ幸せ感にまったりと浸りたい。 あぁ、そうだ。こんな時のためにアレがあるんじゃねーか。 白蘭様の買い物のお供で日本に行った時に、自分もつい欲しくなって買っちまったデカいクッション。 オルゲルトが帰ってくるまでまだ時間があるし、あの上で少し昼寝でもしよう。 部屋まで行くのがすげーだりぃけど。 この椅子、白蘭様からいただいたサブ匣の玉座みたいに動けばいいのによ、なんて毒づきながらしばらくそのままグダグダとしていたが、どうにもならないので仕方なく諦め渋々と腰を上げた。 ちょっとの我慢だ。部屋に着きさえすれば、まるで雲の上に寝転んでる様な至福のひとときがオレを待っている。 頭に思い浮かべた心地良さを原動力にして足を自室へと進め、扉を開けていそいそとクッションを置いているエリアに向かう。 そして勢いよくぼふんと飛び込もうとしたその先―― 「!?」 居るはずのない先客が横たわっているのに気付き、寸でのところで何とか踏み止まった。 「ん……」 「て、てんめぇ……」 「ンん……すー……」 「おい、このクソ弟! 人のモン何無断で使ってんだよ! 形、変わっちまってるじゃねーか!!」 体勢を立て直しながら改めて目の前の光景を見やり、状況を把握して声を荒げる。 だが、クッションの上で気持ちよさそうに寝息を立てている侵入者――ベルは小さく身じろぐだけで起きる気配はない。 床にはヴァリアーの隊服とボーダーシャツが脱ぎ散らかされており、タンクトップと下着だけというだらけきった姿にますます苛立ちを掻き立てられた。 ざけんな、ここはお前の家かっつーの!! この城は一族の数ある隠し別荘の一つで、ガキの頃何度かここで過ごしたことがあるから自分の別荘でもあると思ってんのかもしれねーが、今はオレ様の住居として使ってんだよ。 来るのは別に構わねーけど、この寛ぎっぷりはねぇだろ。 それに、人が報告書に悪戦苦闘してた時にコイツはグースカ快く寝てたのかと思うと腹立たしいことこの上ない。 「股間、踏み潰してやろうか……」 猫みたいに股をだらしなくおっぴろげている格好にいい加減我慢の限界が来て、足を振り上げたところでふと気付く。 タンクトップの裾からチラ見えしている下着の一部が妙に膨らんでいることに。 人ん家で勝手に昼寝おっぱじめた挙句、勃起までしやがって何こいつ。リラックスしすぎじゃね? まぁ、このクッションの強烈な魔力を身をもって知ってるから、こうなっちまうのも分からないでもねーけどな。 「…………」 怒りはまだ収まっていないが中途半端に上げていた足を一旦下ろし、今一度ベルの寝姿をじっくりと眺める。 タンクトップがずれて露出した片肩と鎖骨。 無意識に裾を捲ったことで外気に晒された、呼吸と共に緩やかに上下する三日月の痣とヘソ。 あまり筋肉質じゃない、すらっとして張りのある柔らかな白い腿。 その全てが艶を醸し出しているようで、いつもの警戒心が微塵もない姿も相俟って憤りはいつしか別の感情へとすり替わっていた。 「お仕置きヘンコー……しししっ」 ほくそ笑みながらブーツを脱いで素足になると、赤と黒のボーダーのこんもりとした部分にそっと片足を乗せる。 「……っ……」 一瞬ベルの体がピクッと反応を見せるが、目を覚ます気配はない。 すぐに起きられちゃあつまんねーから、様子を窺いつつ、ゆっくり、ゆっくりと上下に足裏を滑らせてみた。 「んッ……ぅ……」 「このふにっと具合……まだ半勃ちってとこか? ほらほら、もっと弄ってやるから、オレ様の足でフル勃起しちまえ!」 「ぁっ、ン……ふァ……」 擦るだけじゃなく、軽く揉むように刺激したり、時々つま先でタマをちょんちょんつついたりと、布越しに伝わってくる感触と生温かさを楽しみながらベルへの愛撫を繰り返す。 しっかし、熟睡してても体はしっかり感じてんだな。さすが淫乱、感度抜群。 この調子だと眠ったままイッちゃうんじゃねぇの? 足による愛撫でもうだいぶ硬くなったその部分に、グッと少し強めに体重をかけてみる。 すると、呻くような小さな吐息が漏れ聞こえた後すぐ、ベルが薄ぼんやりと目を開くのが長い前髪の隙間から垣間見えた。 「…………ん……」 「よう、お目覚めか? 愚弟ちゃん」 体勢はそのままで声を掛けると、まだ焦点の定まらない瞳がこちらを見上げてくる。 「ンー、ん……あれ? ジル? 何で居んの……」 「あ゛ぁ!?」 人のテリトリーで余裕ぶっこいて寝ていたら、その隙に急所を押さえられていた――そんな驚きと屈辱に極楽気分から一気にどん底まで突き落とされたベルの表情が見られると愉しみにしていたのに。 全く動じないどころか、言うに事欠いて『何で居んの』だと!? ふざけんなよ、おい! ここをどこだと思ってんだ!! ぶり返してきた怒りにわなわなと震えていると、まだ気付かないのかベルは悪びれる風もなく更に続ける。 「あーそうだ……久し振りに、おちょくりに来たら……ジル居なくて……なんかいーモン、あった、から……ちょと借り……ンぁ……」 まだ蕩けたままの意識を如実に表すようなたどたどしい口調と、徐々に落ちていく瞼。 自分が今どんな状況かマジで分かってねぇようだな。 なら、ちゃーんと理解させてやらなくちゃなと、もう一度、さっきよりも強めに股間を踏みつけてやった。 「ひっ!? あ……え? え!? ちょ、ちょっ、何してんだよジル!!」 「それはこっちのセリフだっつーの」 「く、ンッ……」 食らった刺激とその出どころを目の当たりにしてさすがに目が覚めたのか、ベルが慌てふためき始める。 そうそう、これを待ってたんだよ。この反応を。 だんだん気分が良くなってくるのを感じながら、抵抗を封じるためにつま先でぐりぐりと股間をもみくちゃにし続ける。 寝起きでまだしっかり働いてない頭が混乱してるわけだし、クッションに体が埋もれて上手く身動き取れないだろうから大丈夫だとは思うけど、念のため。 「あッ、止め……んんっ……」 「止めろ? 何言ってんだよ、こんなおっ勃てといて」 「お、お前が刺激……ぅう……するから、だろっ……」 「何もする前から勃ってたし」 「なっ……嘘……んなワケ……ンぅっ……」 生理現象のこともあってハッキリと否定しきれないのか、か細い悶え声で無駄な抵抗をしていたベルが口篭りながら押し黙る。 目ぇ逸らして、口キュッて噤んじゃって……かんわい〜♪ 堪らなくなって足を退かし、覆い被さるようにベルの上に重なると、もっと追い打ちをかけてやろうと耳元に唇を寄せ、からかうみたいに囁いてやった。 「つーかさ、自分からこんなカッコして無防備に寝てるとか、誘ってたんじゃねーの?」 「!? だっ、誰が誘うか、この変態バカ兄貴! 脱いだほうが寝心地よさそうってちょっと試してみたら、うっかりそのままマジ寝しちゃっただけだし! お前こそ人の股間足蹴にした挙げ句乗っかってきてんじゃねーよ! 退け! 降りろ!!」 耳にかかるオレの息に反応したのか、ベルはビクン、と体を跳ねさせた後ハッと我に返ったように真っ赤になって、早口で捲し立てながら肩をグイグイ押し返してくる。 ししっ、嫌がってる割にはぜーんぜん力入ってないぜ? そりゃそうだろうなぁ。このクッションの包容力と吸引力に取り憑かれちまった上に、目覚めた時には身体デキあがってる状態だもんよ。 身も心もふにゃふにゃになっちまうよなぁ? 湧き上がってくる高揚感に自然と口角が吊り上がるのを感じながら心の中でそう囁きかけ、口からは自業自得を自覚させるための諭しと煽りの言葉を紡ぎ出す。 「思ってもやらねーだろ、普通。人ん家で半裸で居眠りこくとかさぁ」 「う……だから、それは……」 「それに、誰が『変態バカ兄貴』だって? もっこりテント晒して寝てたヤツに言われ……」 「わぁぁ! 止めろ! もっこり言うなぁっ!! だいたいさぁ、今日に限って何!? 勝手に入ってソファーで寛いでても、いつも何にも言わなかったじゃん!」 反論できなくてたじろいでたクセに、寝勃起のことをつつかれた途端ベルが遮るように逆ギレしてきた。 オレの体を撥ね除けようとする手の力も心なしか強まってきてる。 でも形勢逆転される気とか全然しねぇんだけど。随分と可愛い抵抗だな。 こうムキになられると、もうちょいからかってやりたくなってくる。 まぁでもそれはまた後でのお楽しみにとっといて、ベルがクッションの惑溺感から完全に抜け出す前にそろそろここらでキメとくか。 むぅ、とむくれた表情に後ろ髪を引かれつつも、オレを拒もうと必死な細い手首をそれぞれ掴んで互いの顔の距離をぐっと詰めた。 「!?」 あまりにも簡単に両手の自由を奪われ迫られたことに驚愕したのか、ベルが僅かばかり固まる。 その隙に腕を顔の横に縫い付け、軽く体重をかけながら自分のしでかしたことの重大さを言い含めてやった。 「ホント分かってねぇなぁ、ベルよぉ……ソファーとこのクッションじゃ、勝手に使った罪の重みが違うんだよ」 「え……」 「いいか? お前はこのクッションに付いていた、オレ様の体がジャストフィットするくぼみを崩した。これは万死に値する」 「はぁ?」 真顔になったオレに釣られたのか、藻掻くのを止めて神妙に聞いていたベルの口から気の抜けた、呆れたような声が漏れる。 そんくらいのことで、と思ってるんだろうが、オレ様的にはここが一番の怒りポイントなんだよ! あの形が出来上がるまでに、買ってからどれだけの時間が掛かったことか…… そんなオレの気も知らず、ベルはやれやれと言わんばかりの溜息をつきながら反省もなく生意気な口を利いてくる。 「何? ジル、んなくだらないことで怒ってたの? くぼみくらいまた作ればいいじゃん」 「あのなぁ……あのくぼみはなぁ、横になる度により快適に過ごせるようにちょっとずつ調整して、ようやくいい具合にフィットするようになったんだよ。いくらオレ様が天才でも、あれと寸分違わず同じモンは二度と作れねーよ」 「でっ、でも、近いモンなら作れるだろ!?」 手首に込められる力が強まっていくのを感じて自分の置かれている状況を思い出したのか、ベルの表情に焦りの色が浮かぶ。 けれど、謝罪の言葉は未だにない。 それどころか、まだ許してもらえると思っているのか往生際悪く足掻いてる。 絶対、許さねぇよ? 真っ直ぐ視線でそう告げると、怒りをぶつけるように唇を押し当て小賢しい口を塞いだ。 「んぅっ…………っは、何すんだよ! オレが退かなきゃお前だって新しいくぼみ作れないだろ!? いい加減離せ! 降りろって!」 「近いモンならまた何度か調整すれば出来るだろうが、お前がオレ様の試行錯誤の結果を台無しにした罪は消えねぇし、重い。てことで、この償いは体でシてもらうから」 「はぁあ!? 結局理由付けてヤりたいだけなんじゃん! 体で償えとかふざけんな!」 「勘違いすんな。オレ様は心が広いから、今日のところはソレで許してやるって言ってんだよ。いいから大人しくしとけ」 顔を振って逃れていく唇を敢えて追わず離し、罰を宣告する。 予想通り突っかかってきたから一頻り反論させてやった後、もう一度荒々しく唇を重ねてそれ以上の抗議を封じた。 「ぅ……んーっ……」 またイヤイヤと首を振るが、今度は逃さない。 追いかけて何度もキスを押し付け、少しずつベルの頭をクッションに深く沈めていく。 そうして逃げ場がなくなったところでトドメとばかりに顔全体で押さえ付けると、唇の僅かな隙間を縫って舌をするりと滑り込ませた。 「っ……ンん゛ー! んっ、く……んむっ!?」 諦め悪くオレを追い出そうとベルの舌が突き出されるが、逆に絡め取ってキツく吸い上げ、こちらの口内へと引きずり込む。 「ンっん……ぁは……んン、ん、ンッ……」 「ぐっ、ふ……んゥうっ……ンっ、んッ、ンんんっ……」 捕らえた舌を逃がさないように軽く歯で挟み、側面を舌先で擽るようにしてやると、動かせない頭の代わりにピクピクッと肩が跳ねた。 「ん゛んんっ! ンーっ……む、ぅ……っん、ふ……」 それでもしばらく抵抗を見せていたベルだったが、ねっとりヌルヌルと舌で舌を擦り上げているうちに先に身体が陥落の意を示すように力を失い始める。 ちゅ、ちゅっと舌を啜りながら完全に力が抜けきるのを待って唇を解放し覗き込むと、紅い瞳は悦びの色を湛えつつ、目覚めてすぐの時のような蕩けた状態にすっかり戻っていた。 「ふゃ、ぁ……」 二人分の唾液と一緒に子供みたいな吐息を漏らすベルに軽くキスを落とし、そのまま喉元へと唇を走らせる。 「んぁ……ジル、や……」 ベルはぷるっと体を震わせて制止の言葉を小さく呟くが、抵抗はもうしてこない。 確信して手首を離すと、舌先でチロチロ小刻みに鎖骨を撫でながらタンクトップをそろそろとたくし上げていった。 「ししし、こっちもピーンって勃ってんな」 「っ!? お、大袈裟……そんななってねーもん」 「そうかぁ? オレには『こっちも弄って』っておねだりしてるようにしか見えねーんだけど」 火照りでほんのり色付いた肌の上で一際存在を主張している二つの突起。 それを今更まだ否定するから、理解させるために一つをキュウッと摘んでやった。 「ぁう!」 「あ゛はぁ、コッチコチ〜」 「だから触んなって! つか、体で償うとか、オレまだ納得してねーし!」 「なーに言ってんだよ。納得してようがしてまいが、お前に拒否権なんてねーんだよ」 「クソッ……てんめ、フザけ……ぅうっ、ぐ……」 「それに、指で扱けちまうくらいこんなピンコ勃ちにしといて嫌とか説得力ねぇよ? ほらほら♪」 「ひァあッ……ちょ……んな、弄んなっ……ぅんんっ……」 まだ生意気言う余裕残ってんのか。それならばと、もう片方にも手を伸ばして爪を立て、カリカリと引っ掻くようにして僅かに残る反抗心を削いでいく。 続け様にこすこすと指の腹を上下させて摘んでいた突起を絞り擦ると、耐え切れなくなったのかベルは悪態をつきながらも声をくぐもらせて身悶え始めた。 ったくちょろいよなー。ちょーっと乳首弄っただけでしおらしくなるんだもんよ。 そのまま何も考えられなくなるくらいオレ様の愛撫に溺れて、従順に可愛くアンアン喘いでな。 「ン、む……ん……」 「んンッ……っぁ、は……マジ、止め……あ、アぁっ……」 悔しげに感じてるベルの表情を眺めつつ、指と入れ替わりに口に含んだ突起を舌の上で転がす。 もちろんもう片方もお留守にしないで、ぐりぐり押し潰すように捏ねたり、ピシピシ弾いたり、ちょっと辛口な愛撫を施してやる。 コイツ、酷くされんのも好きだから、お仕置き代わりには全然なってねーみたいだけど。 その証拠に、素直なほうのベルが『放置しないで、こっちもシて』って、さっきからオレの腹をグイグイと押してくる。 あーはいはい、今構ってやるから待ってろ。 返事代わりにぷっくり膨れた突起にカリッと歯を立ててから顔を上げると、桜色の濃くなった肌に舌を這わせながらゆっくりソッチへ近付いていった。 「ん?」 三日月の痣が視界に入るところまで下りてくると、下着の上端から赤く濡れた先っちょが顔を覗かせているのに気付く。 そんなに待ちきれなかったのかよ。でもザーンネン、オマエにはまだ触ってやんねーから。 焦らしてからかうのも構ううち、ってな。しししっ! ヒクヒクと息づくソコに触れるギリギリまで唇を寄せ、ベルの期待が高まりきったところでふいっと裏切り顔を上げる。 「ぁ……」 そして、そんなぁって切なげに潤んだ瞳にニヤリと笑ってみせると、狼狽えたように震えるその根元の膨らみへと鼻口を埋めた。 「……っく……ん……」 すぐに不満を訴えるみたいに腿で首を挟んでくるが、おねだりはプライドが許さないのかそれ以上何も言ってこないし、してこない。 だからこっちもしれっと両膝に手を掛け、抉じ開けて、鼻先をぐっと深くめり込ませてやった。 「あぅ……ッ……」 あ、このふにふに感結構イイかも。クッションほどの包容感はねーけど、柔らかくてほんのりあったかくて、蒸れて汗ばんだエロい匂いがなんかクセになりそ…… 「ん……ン、ふ……ンんっ……」 「ひ、ァ……ぅゥ……く……」 中心部だけでなく、サオの根元付近や尻穴の近くまで鼻を滑らせて袋全体を嗅いでいき、それぞれの匂いの微妙な違いを堪能していると、ベルが照れくさそうに身を捩じらす。 何? タマタマ嗅がれてコーフンしちゃってんの? やんらしー。 恥ずかしい匂いを嗅がれていることをもっと意識させるようにわざとスンスン鼻音を立ててやると、しばらく耐えていたようだが徐々に細い腰がモジモジと揺れ出し、聞こえるか聞こえないかの小さな声で「やだ」と呟くのが微かに耳に届いてきた。 股ぐらから顔を離して上体を起こすと、耳まで顔を紅潮させ、ねだるような上目で見つめてくるベルと視線がかち合う。 「っ……」 あんまりにも艶かしいその表情に、危うく理性の箍が外れるところだった。 でもどうにか持ちこたえ、気付かれないようにそっと安堵の息をつく。 ベルの口からちゃんと謝罪とおねだりを聞くまでは、許すわけにはいかねーからな。 内心でそう思い返し、昂る気持ちが少し落ち着くのを待ってから口を開いた。 「あー、ワリィワリィ。ずっとこればっかじゃ嫌だよな」 言いながら膝の裏に手を掛けると、この先の期待にベルの口元がふわっと緩む。 自分の望む通りのものが与えられると信じきった顔……つい嘲笑してしまいそうになるのを抑えつつ両足を持ち上げ、浮いた尻からするっと下着を引き下ろす。 そのまま丸まった赤と黒の布切れを腿のほうへとずらしながら腹に付くように足を折り曲げていき、オレ様の前に大事な場所を曝け出す格好になったところでまた突き落としてやった。 「パンツ越しじゃ焦れったいだろうから、直にタマタマ舐め舐めしてやるな」 「えっ? あ……ちょ、待……っ! ひぅぅっ……」 一瞬ぽかんとした後、慌てて何か言いたげに口をぱくぱくさせるベルを横目に、あむっと唇でタマに齧り付く。 スベスベでプラムみたいなソレをはむはむ味わいながら、口内では舌を忙しなく動かして表面を満遍なく舐め回して。 時折袋の中の二つの塊を交互にちゅぱちゅぱ吸ってしゃぶって、コロコロ舌の上で転がすように弄ぶ。 真ん中のスジの部分はつぅーっと舌先を上下に往復させて何度も丁寧になぞり上げ、徹底してタマだけに愛撫を施し続けていると、いつしかベルの口からは声にならない短い声と甘い吐息しか生まれなくなっていた。 「っはァ……」 一旦口内から袋を吐き出し様子を窺うと、放置されたペニスが流した涙で腹がベトベトに濡れているのが目に入る。 「何だよベル、そんなにタマタマがいいのかよ」 粘つく透明な汁を指先で掬い、三日月の痣に塗り付けるようになぞりながら呟くと、宙を彷徨っていた虚ろな目がピクリと反応し、ゆっくりこちらに向けられた。 「どうする? このままタマだけでイッとくか?」 返される答えを分かっていながら、敢えて尋ねる。 予想通りベルはふるふると首を横に振り、上擦った切なげな声で懇願してきた。 「ソッチばっか……やだ……」 「んじゃ、他に言うことあるだろ?」 「…………」 ピシャリと返すとグッと押し黙り、二人の間にしばしの沈黙が流れる。 まだ迷うってことは焦らしが足りなかったか? そう思いかけたところで、ベルがぽつりと言葉を漏らした。 「………………ごめん」 「ンー?」 あまりにも小さな声だったから、聞こえなかった振りをしてもう一度促す。 瞬時にベルの表情がムッと曇るが、体の中で燻る熱にはもう逆らえないのかすぐに尖らせていた唇を解き、縋るみたいに切羽詰まった声を上げてきた。 「クッション、勝手に使ってごめん。ちゃんと……償う、から……だからっ……」 「……」 少し待ってみたが、おねだりの言葉はそれ以上出てこなかった。80点てとこかな。 でもまぁ、これで許してやるよ。オレもそろそろヨくなりたいし。 「しょうがねーなぁ……そんじゃ、お前のだぁいすきな兄様のチ×ポ挿れてやるよ」 「ァっ……ちょ、いきなりそっち!? あ、ンぁァッ……」 前を寛げながらもう片方の手を尻の割れ目に滑り込ませ、その奥で息づく小さな穴を指で撫でつけると、ベルは腰を揺らしつつも不満を垂らす。 ホンット、我儘だよなぁ……ま、オレも分かっててやってんだけど。 つぷ、と指先をベルの中に沈めながら、聞く気がない言い分をとりあえず尋ねてやる。 「何が不満なんだよ」 「ンッ……不満つか……っッ……チ×コ、弄ってくんねーの?」 「それは後でな」 「後って、いつ……ンあぁっ……」 「後では後で、だよ!」 焦れてなりふり構わなくなったのか、されたいことを直球で口に出してきた。 全然おねだりする態度じゃねーし、そもそもすぐに叶えてやるつもりもなかったから、濁しつつ指を動かし、同時に自分のを扱いて全体に先走りを馴染ませていく。 そしてベルの中がある程度解れたところで指を引き抜くと、入れ替わりに己の先端を当てがい、そのまま根元まで一気に突き入れた。 「ッぁ……や……ひぁ、アあァぁッっ!!」 「ししし、チ×ポには指一本触れられないまま、タマとケツの快感だけでイッちまえ!」 少々性急かとも思ったが、このクッションで貪る惰眠の心地良さに弛緩しきり、その上散々焦らされ快楽に従順になった体は先走りとタマ舐めの時に垂らしておいた唾液の滑りだけでも十分にペニスを受け入れ、ぐいぐいと飲み込んでいく。 未だ諦め悪く藻掻いているベルにそれを見せつけてやろうと、下着が絡まったままの膝裏を押して両足を頭のほうまで折り曲げ、でんぐり返しの途中みたいな恥ずかしい格好にして押さえつけてやった。 「うぁっ!? や、止め、あッ……こんなカッコ、やだっ……」 「何恥ずかしがってんだよ……んっ、ン……オレが戻った時は、もっと、ぱかーんって足広げてたクセに」 「んなの、してな……やっ……ぁあ゛っ……」 「いーや、してたね! あーもしかして、クッションに染み付いたオレの匂い嗅いでるうちに、無意識に股開いちまったとか?」 「!? んなワケねーしっ……お前の、匂いでなんて……ん゛っ……そんな……つーか、謝ったのに……ズ、ゥん……ズリぃっ……」 煽りの言葉を否定しきれないのか、ベルは赤くなった顔をますます赤くして話題を逸らす。 何コイツ可愛い……思わずキュンときてしまったせいか、もっと焦らして苛めてやりたいと思うオレの意思に反して腰の抽送が早まっていく。 ちょっと不服そうにしていたベルの顔もだんだんと快楽一色に染まっていき、減った口数の分嬌声が部屋の中に響き渡った。 「あぁ、アッ……ぅンッ……あ゛はッ……」 「んァッ……あ、ア、あっ……」 体を起こし、繋がった部分がお互いに見えるように腿をしっかりと押さえ、先端から根元までずぽずぽ出し入れを繰り返す。 ベルはそれを目にして快感を昂らせ、キュウキュウとオレを締め付けて悦びを伝えてくる。 そうして互いに互いを昂らせ合っているうちに、一足先にベルが限界に達した。 「あ、ダメ、もう……イッ……あ゛ぁアあァあーーッ!!」 「っ!! くぅッ……オレ、も、出っ……はあ゛ぁっ!」 全身をビクビクと痙攣させながら一際強くオレを締め上げ、自らの胸や腹に向かってびゅくん、びゅくんと白濁した熱い液を弾かせる。 その蠢く腰を両手で抱き寄せ自身をぐぐっと深く押し込むと、追いかけるように大量の熱を吐き出し、ベルの中がオレでいっぱいに満ちていく悦びに身を打ち振るわせた―― 「あーあ、クッションべっとべとになっちまったなぁ」 吐精後の心地良い倦怠感を味わいながら眼前に目をやると、同じく後始末もせず前半身と尻を白く濡らしたまま気怠げに微睡んでいたベルが視線だけこちらに向けてボソッと呟く。 「ったく、誰のせいだか……」 「モフモフ感に負けて無防備な姿晒してた誰かさんのせいじゃね?」 「…………クソッ」 「ししし、そんなに気に入ったならこれやるよ」 「いらね。ザーメン臭くなったモン人に押し付けんな」 「チッ、バレたか……まぁ、どのみち処分すんならこれ以上汚れても気にしなくていいか」 「へ? ……って、このクソ兄貴! またどこ触ってんだよ!!」 すっかりいつもの調子で言葉を交わし、まったりとした事後の雰囲気が吹き飛んだところで不意打ちにベルの少し萎えたペニスを握る。 そのままぬちゃぬちゃと粘液を塗り付けるように上下に扱いてやると、あっという間にソコは体積を増してヒクヒクと疼きを主にもたらした。 「ァは……何、もう一戦する気?」 「さっき言ったろ? こっちは後で、って」 「……こんなすぐなら、さっきシてくれてもよかったじゃん」 「ン? もういいなら止めるけど」 ぷぅと頬を膨らますベルについつい意地悪心を擽られてワザとらしくパッと手を離すと、ますます恨めしそうになった目がこちらを睨んでくる。 だがすぐに思い直したようにおずおずと手が伸ばされ、オレの手を掴んですっと自分の股間まで導いた。 「オレ謝ったんだから、ジルもちゃんとシて」 「ししっ、イイ子で言えたからシてやるよ。イヤっていうくらいたーっぷりとな」 まだ少しむくれながらも可愛くおねだりしてくるベルの額にちゅ、と口付けてから一旦手を離し、申し訳程度に纏っているタンクトップと下着を脱がせて自分も手早く一糸纏わぬ姿になると、その場に膝をつく。 そしてクッションよりもずっとずっと依存性があってオレ様にぴったりとフィットするベルの上にそっと体を重ね合わせた。 |
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